これは1本のビールが家族の笑顔を生んだ物語です。
ご新婦のご両親は小さいころに離別され、
妹様、お姉様と一緒にお母様に育てられてきました。
結婚式当日はお父様も当日参列してくださることとなり、
お父様にも来てほしかったご新婦はとても嬉しそうでした。
そして結婚式当日、
家族のテーブルはお母様、お姉様、妹様、そしてお父様の4名席。
歓談の時間では、お母様やお姉様たちは楽しそうに談笑されており、
あわせてお父様も笑顔を見せるのですが、少し寂しそうです。
フォトタイムとなりお写真撮影のご案内をしたところ、
お母様とご姉妹は嬉しそうにお二人の元へ進まれました。
しかし、お父様は一緒には向かわず
微笑みながら、その様子を遠くから眺めていらっしゃったのです。
ご新婦が、お父様の事が好きだということを知っていた私は、
直接お父様の口からご新婦へ「おめでとう」と伝えて頂きたい。
もっと近い距離で、お父様にも楽しんでほしい。
そう思って1本の瓶ビールをお渡ししました。
お二人のもとへと向かうきっかけ作りです。
「お父様。ぜひ、ご新郎に注いであげてください。
そして、ご新婦に声をかけてあげてください。
ずっと前からお父様とお会いできるのを楽しみにされていました」
お父様は一呼吸おいてから、にこやかに「そうだね。」と頷かれました。
そして、ゆっくりとお二人のもとへ向かい、少し恥ずかしそうにご新郎へ声をかけるとビールを注がれました。
ビールを注ぎ終わったお父様とご新郎は照れくさそうに、笑顔で握手を交わされました。
ご新婦はとても嬉しそうな表情です。
そしてその様子を、お母様もご覧になっていらっしゃいました。
お父様が席に戻ったあとは、まっすぐメインテーブルのお二人へ目を向け、
ご結婚式を楽しんでくださっている様子でした。
その横顔を見て、お母様がお父様に話しかけてくださったのです。
結婚式がお開きになった後、
お二人とお母様、ご姉妹、そしてお父様が一緒に笑顔で談笑しながら、
家族写真を撮影される姿を見て、私はとても温かい気持ちになりました。