ある結婚式の、新婦様とおばあ様の心温まる物語です。
新婦様のご親族の担当をしていたサービススタッフが、
おばあ様が大切そうに何かを持っていらっしゃることに気が付きました。
かけがえない宝物のように、何度も見ては胸に抱くように握りしめていたのは、
ふたつのお手紙でした。
「おばあ様、それはどういった物なのですか?とても大切そうにされているので気になって。」
と、スタッフが尋ねたところ、こんなエピソードを教えてくれました。
「実は、あの子が6歳の頃、カレンダーの裏紙にお手紙を書いてくれたの。
その手紙の最後にね、私の結婚式の時にお返事を書いてねってお願いされていて。
忘れられなくって、今日書いて持ってきちゃったの」
20年前の約束をずっと覚えていて、新婦様からの手紙を大切に保管していたというおばあ様。
手には「20年前の新婦からの手紙」と「その返事の手紙」が握られていたのでした。
その心温まるエピソードはすぐに親御様担当のスタッフから、全てのスタッフに共有され、
プランナーの私はすぐにおばあ様の元へ向かいました。
お話を伺うと、ご披露宴が終わった後でこっそりと手紙を渡そうと思っていたそうで、
それを聞いた私は「せっかくですので、直接お手紙を読んでいただけませんか?」
とおすすめしました。
ですが「恥ずかしいから」と、お断りされてしまいました。
きっとかけがえのない瞬間になる。
そう確信していた私はもう一歩踏み込み、司会者からの代読をご提案。
すると「それなら、ぜひお願いします」と、笑顔で「お手紙」を託してくださいました。
私はすぐさま、一番素敵な瞬間に出来るのは、進行のどのタイミングかを
サービスマネージャー、司会者、ピアニストと話し合い、
そして立ち会う全てのスタッフにおばあ様のこの想いを共有しました。
すると、その共有を聞いたスタッフが一気に動きはじめました。
20年にも渡る『新婦とおばあ様の約束』の想いが交わされる瞬間を最高の時間にしようと、
みんなが同じ想いで動き出したのです。
キッチンのシェフは「そのシーンはお料理のサービスをストップして静かな雰囲気をつくろう」と
キッチンスタッフへ指示を出し、
親御様担当のスタッフは、おばあ様やご両親に新婦様が小さかった頃に好きだった曲をお伺いし、
そして音響、照明スタッフはそのシーンの明るさ、雰囲気のイメージを摺合せし
カメラマンはこの最高のシーンをしっかりと未来に残すためにスタンバイ。
このひとつのシーンを最高なものにするために、
瞬時にすべてのスタッフが臨機応変に動き、連携しながら空間を創っていく準備を整えました。
そしてその瞬間がやってきます。
少しずつ薄暗くもあたたかな照明に転じた会場。
小さかった頃好きだった曲がピアノからが流れ出し、驚く新婦様。
司会者がこのエピソードと共に、
ゆっくりと新婦様からの手紙と、おばあ様からのお返事を読み上げます。
「私の結婚式の時にお返事を書いてね。」
「覚えていますか、あなたが6歳の時にくれた手紙を、今日まで大切に持っていました。
すごく嬉しかったのよ。ありがとう。そして、おめでとう。」
カレンダーの裏に書かれた20年越しの『約束の手紙』
その約束をずっと想ってくれていた、おばあ様の愛溢れるお返事に
新婦様は大粒の涙を流され、会場中が温かい空気に包まれました。
そのあと、とても嬉しそうに言葉を交わされるおばあ様とご新婦様、
ふたつのお手紙を大切そうににぎり、カメラマンに笑顔を向ける姿に
私をはじめとするスタッフ全員、心から幸せな気持ちになりました。
ご披露宴のあと、新婦様からこんなお言葉を頂きました。
「私はすっかり忘れていたのですが、
おばあちゃんが私の手紙をそんなに大事に持っていてくれなんて。
その事を、今日知る事ができて本当に嬉しかったです。」
「あんな素敵な時間をつくってくれて本当にありがとうございました」
ひとりのスタッフの気付きから生まれた、心温まるワンシーン。
最高な結婚式をお創りするために、私たちウェディングスタッフが出来ることは
まだまだあると心から感じた素敵な結婚式でした。