週末に結婚式を控えた新婦様から会場にご連絡がありました。
『私のお父さんですが、仕事で足をケガしてしまい、もしかしたら一緒にバージンロードを歩けないかもしれません。』
プライドの高い職人気質なお父様で、もしかしたら周りの事を気にして
『自分は車椅子でなんかエスコートをしない』
と言いかねないとの事でした。
結婚式当日、ご来館されたお父様は杖をつき、顔をしかめながらもゆっくりゆっくり歩いてらっしゃいました。とても周りを気にされながら。
ご結婚式をお手伝いさせていただくスタッフの一人として、何かできるのではないかと思い、時間をかけてお父様とお話しをしていきました。
会話の中で、新婦様の予想通りの言葉が出てきました。
「車椅子で花嫁と一緒に入場する人なんているの?やっぱりみっともないよね。」
と少し寂しそうに、諦めたような口調で話されるお父様。
このままだと、一緒に歩かない選択をお父様はされるかもしれない。
一緒に歩いてもらいたいと思いながら私は会話を続けました。
すると、お父様が何気なくおっしゃったのです。
「昨日病院でね、杖つきながらだけど、10mも歩けたんだよ。」
それを聞いたときにハッと気づきました。
足が痛い中諦めず、病院で一生懸命練習されたこと。
当日の朝も、家族に支えられながら杖をついてご来館されたこと。
お父様の『娘と一緒に歩きたい』という気持ちが、その一言に込められていることを強く感じたのです。
私はすぐに担当のウェディングプランナーとサービスキャプテンに、お父様の言葉を伝えました。
ウェディングプランナーは新婦様のもとへ伺うと
「本当はお父様、新婦様と一緒に歩きたいと思われています。実は昨日病院で、バージンロードを歩く練習をされていたようなのです。」
とお伝えしました。
そして、挙式の前に新婦様から一言、声をかけていただきました。
「お父さん。一緒に歩こう」
迷っていたお父様もその一言で心が決まったようでした。
迎えた挙式本番。
そこにはゆっくりとゆっくりと、バージンロードを進むお二人の姿がありました。
笑顔の新婦様の隣で、嬉しそうに、そして誇らしそうに歩くお父様。
見守るお母様も、目に涙をためておられました。
その後のご披露宴でも、晴れやかな表情のお父様の姿がそこにはありました。
お開きの後、お父様にご挨拶に伺うととても嬉しいお言葉をいただきました。
「ありがとうね。あの子とバージンロードを歩けて、とても幸せでした。」
そうおっしゃり、強く握手をしてくださいました。
もし、お父様の言葉を表面だけ受けとっていたら、深い所にある思いを汲みとれなかったかもしれない。
一緒にバージンロードを歩くことができず、家族の心のどこかに後悔が残ったかもしれません。
お父様に寄り添い、言葉の裏側にある本当の想いを汲みとれたことで、親子の未来が変わった。
そんな素敵な時間でした。