この世界の綺麗なものを、
あなたと見たい景色が、まだまだあるんです
だからずっと、僕の隣にいてくれますか
それは無理なの。
私はあなたに触れることが出来ない。人のぬくもりに触れたら私は消えてしまう
でも、一目でいいからあなたに逢いたかった、逢って直接伝えたかった
『見つけてくれてありがとう。』って
モノクロ映画のヒロインと、
そのフィルムを擦り切れるまで何度も見続けてきた、現実世界の青年
出会うはずの無かった二人の、色彩を持たない恋物語
今回は2018年2月に映画化もされた宇山佳佑さんの
【 今夜、ロマンス劇場で (集英社文庫)】 をご紹介いたします
今夜、ロマンス劇場で (集英社文庫(日本)) [ 宇山 佳佑 ] 価格:572円 |
神様、どうか2人にハッピーエンドをお願いします!!
運命なんてのりこえてしまえー!!と、心の中で願ってしまう、
そんな物語をお届けします!
それではどうぞ、お楽しみください
目次
- あらすじ
- おわりに
あらすじ
映画監督を目指す主人公には、行きつけの映画館があった
その名は『ロマンス劇場』。そこで上映される映画に人々は歓喜し、拍手を送り、涙した
彼は常連だけの特権で、閉館後の映画館で好きな映画を見ることが許されているのだ
決まって見るのはいつも同じ映画。それは偶然見つけた古いフィルム
映画の内容はめちゃくちゃで、だれも見ることの無くなった映画
だがそこに映し出されるヒロインはとても美しく、どのシーン、どのカットを見てもため息が漏れる
仕事でどんなつらいことがあっても、彼女に逢えば気分が晴れるのだ
この笑顔に逢えるだけで毎日が幸せだった。しかし同時に悲しみも感じている
恋した相手は映画の世界の登場人物。僕らは決して出会えない運命、
そんな中、彼女との別れは突然にやってきた
他の映画のためにも彼女のフィルムを売らなければならない
映画館への客足はどんどんへり、経営は悪化していく一方だからだ
それを知った主人公はなすすべなく、涙ながらに1人、最後の上映会を始めた
全てを心に焼き付けるようにヒロインを見つめ、こう願った
一度でいい、ほんの一瞬でも構わない
神様どうか、彼女に会わせてください。あの笑顔を間近で見たい
すると天候が急激に悪化し、雷の轟音と共に停電。あたりを暗闇が埋め尽くす
真っ暗の中、不自然な衣擦れの音を不審に思いながらあたりを探っていると、
不意に電気がともり、まさかの事態に直面する
さっきまでスクリーンの中にいるはずだった彼女が目の前にいるではないか!
彼女は、モノクロの世界からやってきたのだ
そうして美しさと、天真爛漫さを兼ね備えた彼女に振り回される日々がやってきた
彼女はお転婆で、でもその姿には気品があって。彼女は色んな表情を僕に見せてくれる
まるで万華鏡のように美しく、わがままで面倒な人だけど、そんな彼女に僕は心を奪われた
彼女に振り回されて、へとへとになったときも、映画に想いを馳せていた事を想い出す
僕はこの人の、こういうところが好きなんだ
彼女は自由で、それでいて美しい。色彩を持たなくとも、この世界の何よりもきれいだ
まるで空にかかる虹のように、彼女の笑顔は鮮やかに輝いて見えた
そんな時間が続くも、彼女が言えなかった秘密を打ち明ける
【この世界に来る代償として、人に触れることが出来ない】
はじめは意識していなかったが一緒にいたいからこそ、触れないように距離を取る
住む世界が違うから、触れ合うことも出来なければ同じ色を纏うこともできない
手を伸ばせば触れられる距離にいるのに、決して結ばれない定め。
僕らの恋の結末は、一体どうなるのだろう。それを想うと堪らなくなる
この日、初めて彼女との日々の終わりを、真剣に意識した
彼女の願いも強くなっていく
私にも色がほしい。彼と同じ色がほしい。
この体に、この指に、もし同じ色を纏うことが出来たなら、
私たちは一緒に生きていけたかもしれない
だから私は色がほしい。同じ人間になりたい
2人は初めて出会った映画館で『お互いに触れることの出来ない運命』を受け入れ、愛を誓い合った
幾ばくか時は流れ、主人公に老いがやってきた。入院生活を余儀なくされ、ついに最後の時がやってくる
彼女は映画の世界の人だから年齢はとらない。転んでも、支えてあげる事さえできない
それでも色あせることのない想い
最後に、ゲームをしよう。いつもやっていた連想ゲームだ。お題は、そうだな、『きれいなもの』
そう言い残すと年老いた彼の意識は再び遠のき、もう反応がない
これは彼女が色を覚えるために、二人でずっと楽しんできたゲーム
彼女は続ける。
どうしたの?じゃあ、綺麗なもの、私から行くね。
初めて見た青空、
並んで見上げた空にかかる虹、
二人で出かけた町の景色、
蛍を見ながら言ってくれた言葉、
あなたの隣で見た景色は、全部綺麗だった。
きれいで、忘れたくない思い出ばかり、
ひとすじの涙がほほを伝い、彼を濡らす
こんな触れられない私と、今までずっと、ずっとずっと生きてきてくれてありがとう
私はたくさんの幸せという色をもらったよ
でもね、最後にもう一つだけ、言っていい?
あなたに触れたい。触れて、あなたのぬくもりを感じたいの
最後のわがままだから、いいよね・・・?
おわりに
『人生は繰り返すことが出来ない。だから映画が生まれたんだ』
こんな言葉があるように、人生は過ぎていくばかりで、戻ってくることはありません
私たちには忘れたくない感情や、想い出は増えていくばかり、
あの人と話せるだけでも嬉しかった気持ち、出会えただけでも心が躍った日、手を繋いだぬくもり
そんな気持ちを忘れずに、何年たっても映画のような人生を歩みたいものです
年の瀬は特に、大切な人と会う機会が増えます。恋人、家族、親友、同僚、
まだ触れることのできる距離にいるのなら、あたたかい言葉を伝えたいものです
私たちの間に、世界を分ける銀幕は存在しないのですから
最後までお読みいただきありがとうございます。
それでは皆様、良いお年を!
ライター自己紹介
こんにちは!『the Doors』ライターのfu-min(ふーみん)です!
ブライダル業界ではたらくようになり、素晴らしい感動の瞬間と多く出会いました。
『この瞬間を何とか表現できないか、もっと言葉があれば…』
そう思い飛び込んだのが、本の世界でした。今では年間250冊は読むほどに。
皆さんに素敵な言葉をお届けできるよう、本の世界から言葉を探し続けていきます!
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